【2024年】世界中で加速する「米ドル離れ」と注目集まるBRICS市場の将来性

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2024年現在、世界経済の構造は大きく変化しつつあります。長年にわたり世界経済を牽引してきた米国の影響力が徐々に低下し、新興国を中心とする BRICS 諸国の存在感が増しています。

本稿では、実際にブラジル市場で事業を展開するカイコトバの代表が、BRICS 市場の将来性と、世界経済における新たな潮流について詳しく解説します。アジア圏の先進国に拠点を置く企業にとって、BRICS 市場への進出がもたらす機会と課題についても考察します。

1. 世界で進行する米ドル離れの動き

長年にわたり世界経済の基軸通貨としての地位を維持してきた米ドルですが、近年その影響力に陰りが見え始めています。

1-1. 米ドル離れの背景

米ドル離れが進行する主な要因として、以下が挙げられます:

  1. 米国の財政赤字拡大と債務増加
  2. ロシア・中国など対立国の台頭
  3. 地政学的リスクの高まり
  4. デジタル通貨の普及

1-2. 各国の動向

中国やロシアを筆頭に、多くの主要国が米ドルへの依存度を下げる動きを見せています。例えば、以下が挙げられます。

  • 中国: 人民元の国際化を推進し、「一帯一路」構想を通じて人民元建て取引を拡大
  • ロシア: 欧米の制裁を受け、ドル建て資産の保有を大幅に減少
  • インド: ルピー建て原油取引の拡大を模索

1-3. 日本企業への影響

日本の経済はいわゆる「西側諸国」に大きく依存しているため、米ドル離れの進行は、国際取引のある日本企業に限らず日本経済全体に大きな影響を及ぼすでしょう。実際、現在日本は米国債を最も多く保有する海外国となっており、米ドルの価値減少から受ける影響は甚大なものとなり得ます。

  1. 2024年2月時点で、日本の米国債保有額は1兆1,679億ドル(約117兆円)
  2. 2024年1月から1ヶ月で164億ドル増加しており、日本は米国債の最大の海外保有国である
  3. 日本の米国債保有は長期的に増加傾向にあり、2000年12月の5,563億ドルから大幅に増加

2. BRICS賛同国の数は増加する一方

BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は、2024年1月に新たに5カ国(エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、UAE)を加え、その影響力を一層強めています。これにより、BRICS+は世界GDPの約37.3%を占めるまでになりました。

2-1. BRICS拡大の意義

BRICS の拡大は、以下のような意義を持ちます:

  1. 経済規模の拡大: 新規加盟国の参加により、BRICS の経済規模はさらに拡大
  2. 地政学的影響力の増大: 中東・アフリカ地域への影響力が強化
  3. 多極化世界の促進: 米国一極体制からの脱却を加速

出典:BANQUE DE FRANCE

2-2. 賛同国の増加

BRICS への参加や協力に関心を示す国は150カ国以上に上るとされています。これは、新興国や発展途上国を中心に、既存の国際秩序に対する不満や、新たな経済圏への期待が高まっていることを示しています。

2-3. 日本企業にとっての機会と課題

BRICS の拡大は、米国と深い協力関係にある日本経済に大きな混乱を招く可能性が高いです。また後述するように、1991年のソ連崩壊から約30年続いた米国の覇権は終わりに近づいており、これは日本企業の国際戦略に大きな影響を与える可能性があります。

一方で、日本企業の信頼性の高さはいまだ健在であり、早期のBRICS市場参入は日本企業にとって新たな市場機会をもたらすと考えられています。米国市場への依存度を見直し、新興国市場への展開を加速させる必要があるかもしれません。

3. BRICS共通通貨の構想

BRICS 諸国は、米ドルへの依存度を下げるため、共通通貨の導入を検討しています。この構想は、金本位制を基盤とする可能性が指摘されています。

3-1. 金本位「ではない」法定通貨の問題点

歴史上、金に裏付けされない法定通貨は中央銀行や政府のコントロール下にあり、いずれインフレーションによってその通貨としての機能を失う運命にあります。そのため金本位制を採用することで、BRICS 共通通貨の信頼性と安定性を高めることが期待されています。

3-2. 共通通貨導入の目的

また、BRICS 共通通貨の導入には、以下のような目的があるとされています。

  1. 米国一強時代・米ドル依存経済からの脱却
  2. BRICS 諸国間の貿易促進
  3. 国際金融システムにおける発言力の強化

これまで米国は米ドルの力を使って世界の支配者としてふるまっていたので、力を付けた中国・ロシアを中心に、米ドルに支配されない経済圏の構築に動いた、という背景があります。

4. 米国の覇権衰退の兆し

第二次世界大戦後、世界経済を牽引してきた米国ですが、近年は同国内でのインフレーションの加速や、世界経済における脱ドル化(de-dollarization)が進む一方であり、その覇権に陰りが見え始めています。

4-1. 米国覇権衰退の要因

米国の覇権が衰退しつつある主な要因として、以下が挙げられます:

  1. 経済成長の鈍化と財政赤字の拡大
  2. 新興国、特に中国の台頭
  3. 国内の政治的分断
  4. 国際社会における信頼性の低下

4-2. 国際秩序の変化

米国の覇権衰退に伴い、以下のような国際秩序の変化が起こりつつあります:

  1. BRICSを中心とした多極化世界の形成
  2. 地域主義の台頭
  3. 国際機関の役割の変化

5. BRICS市場の将来性

実際、BRICS 諸国は、今後の世界経済を牽引する可能性が高いと考えられています。

5-1. BRICS市場の強み

BRICS 市場の主な強みとして、以下が挙げられます:

  1. 巨大な人口と成長する中間層
  2. 豊富な天然資源
  3. 技術革新への積極的な投資
  4. 若年労働力の豊富さ

BRICS諸国は今後も高い経済成長が見込まれています。特にインドは2024年に6.8%、中国は4.6%、ブラジルは2.09%の成長がと予測されており、安定した経済成長を続けています。これに対し、G7諸国は平均1%の成長予測です。

5-2. 成長が期待される分野

なお、BRICS 市場で特に成長が期待される分野には、以下が挙げられます。

  1. デジタル経済
  2. クリーンエネルギー
  3. インフラ整備
  4. ヘルスケア

6. BRICS経済圏へアジア企業が進出するなら「ブラジル」市場

BRICS 諸国の中でも、ブラジル市場は日本を含むアジア圏の企業にとって特に魅力的な進出先となる可能性があります。

6-1. ブラジル市場の強み

ブラジル市場は、以下の強みがあります。

  1. 豊富な天然資源: 鉄鉱石、石油、農産物など
  2. 巨大な市場:人口2億人以上の消費市場、南米最大・世界9位の巨大経済
  3. 比較的安定した法制度と投資環境、海外企業が進出しやすい
  4. 多様性に富む文化と社会
  5. 日本国外で最大の日本人コミュニティがあるなど、アジア人との親和性が高い

また、ブラジル政府は外国投資を積極的に誘致しており、市場参入を容易にするための規制緩和も進めています。これにより、多くの国際企業がブラジル市場への参入を検討している状態です。

6-2. 他のBRICS諸国と比較した優位性

他のBRICS諸国と比較して、ブラジルはアジア圏、特に日本や台湾など西側諸国の国にとって進出のハードルが低いのが特徴です。

例えばロシアは西側諸国にとっては進出のハードルが高く、中国は外資規制が強化されて経済の停滞も懸念要素です。インドは文化的な複雑性や混沌とした国内情勢が進出を妨げ、南アフリカは治安に関する不安要素が非常に大きい国と言えます。

これらと比較すると、ブラジルは近年のデジタル化に伴って経済成長を続けており、海外企業の参入も比較的容易です。かつ、文化的には多様性に富んでいますが、インドのような難解さはありません。

治安の面でも、ブラジル全体を見るとそこまで悪くはありません。

サンパウロやリオデジャネイロといった特定地域は日本より危険ですが、南アフリカのような壊滅的なレベルではなく、既にブラジルで事業を始めた弊社としては許容範囲でした。

7. BRICSの潮流に乗るならブラジル市場

世界経済の構造変化が進む中、BRICS 市場の重要性は今後さらに高まると予想されます。特にブラジル市場は、その潜在力と安定性から、アジア圏の企業にとって魅力的な進出先となる可能性があります。

日本を含むアジア圏の企業は、これらの変化を機会として捉え、BRICS 市場、特にブラジル市場への戦略的な進出を検討すべきでしょう。同時に、米ドル離れや新たな国際秩序の形成といった大きな潮流にも注意を払い、柔軟な対応を心がける必要があります。

ブラジル市場の調査やマーケティングの展開は、現地で事業を展開するカイコトバにご相談ください。

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