ブラジルは、南米最大の経済大国であり、2億人以上の人口を抱えるBRICSの巨大市場です。近年、デジタル化の波が急速に押し寄せており、eコマースやデジタルペイメント、フィンテックなど様々な分野で目覚ましい成長を遂げています。本記事では、ブラジルのデジタル市場の最新動向や特徴、海外企業にとっての機会について詳しく見ていきます。
1. ブラジルのデジタル市場の概況
2023年時点で世界で9番目に大きな経済圏として成長したブラジルは、特にデジタル市場の発展が目覚ましいことで知られています。
1-1. 急成長するeコマース市場
ブラジルのeコマース市場は、ラテンアメリカ全体の約3分の1を占める巨大市場で、2029年までにeコマース市場規模は1,256億8,000万ドルに達すると予測されています。また、2027年までにブラジル人の3分の2がオンラインショッピングを利用すると見込まれています。
1-2. デジタルペイメントの普及
現金からデジタル決済への移行が加速しており、ブラジル人にとってより迅速で便利な取引方法となっています。特に「PIX」と呼ばれる政府主導の即時支払いシステムが与えた影響は大きなものでした。
デジタルウォレットの利用も急速に拡大しており、約3分の1の国民が利用しているのも特徴的です。PicPayやPagSeguro、Mercado Pago、PayPalなどが主要なデジタルウォレットとして普及しています。
1-3. スタートアップエコシステムの発展
ブラジルには18,000社のスタートアップがあり、ラテンアメリカのスタートアップの77%、投資額の70%以上を占めています。2021年には、世界中のベンチャーキャピタルから過去最高の94億ドルの投資を受けました。
2. 主要なデジタル市場のトレンド
続いて、主要なデジタル市場のトレンドを確認しましょう。
2-1. モバイルファースト
スマートフォンの普及率が高く、多くの消費者がモバイルデバイスを使用してオンラインショッピングや金融サービスを利用しています。モバイル最適化は、ブラジル市場で成功するための重要な要素です。
2-2. B2B市場の成長
B2B市場がデジタル経済を牽引しており、B2C市場の3倍の規模があります。2020年のマッキンゼーの調査によると、ブラジルのB2B企業の少なくとも68%が、サプライヤーの営業担当者とのやり取りにデジタルインタラクションやセルフサービスを好むと回答しました。
2-3. デジタル金融サービスの拡大
デジタルウォレットやネオバンクなどのデジタル金融サービスが急速に普及しています。これらのサービスは、支払い機能だけでなく、保険商品や投資ツール、ビジネス管理機能、暗号通貨の購入オプションなど、多様な金融サービスを提供しています。
2-4. サイバーセキュリティの重要性
デジタル化の進展に伴い、サイバーセキュリティの重要性が高まっています。ブラジルはラテンアメリカでサイバー攻撃の標的となる国の1つであり、ランサムウェアやフィッシング、データ侵害などの脅威に直面しています。
3. 海外企業にとっての機会
日本やアジアの企業は、どのようにブラジルへ参入するべきでしょうか?
続いては、その参入機会について詳しく解説します。
3-1. eコマース市場への参入
急成長するeコマース市場は、海外企業にとって大きな機会を提供しています。特に、モバイル最適化された販売戦略や、現地の決済方法(ボレト・バンカリオやクレジットカードなど)への対応が重要です。
3-2. デジタルマーケティングサービスの提供
ブラジルのデジタルマーケティング市場は拡大しており、海外の専門知識を持つ企業にとって大きな参入機会があります。現地の文化や言語に適応したマーケティング戦略の立案・実行が求められます。
3-3. フィンテックソリューションの展開
デジタル決済やオンラインバンキングの普及に伴い、革新的なフィンテックソリューションへの需要が高まっています。海外のフィンテック企業にとって、ブラジル市場は魅力的な進出先となっています。
3-4. クラウドサービスの提供
デジタルトランスフォーメーションの進展に伴い、クラウドサービスへの需要が高まっています。2024年6月には、Kyndrylがサンパウロにクラウドイノベーションセンターを設立すると発表しました。
4. 成功事例
ブラジル市場におけるデジタル事業の成功事例をご紹介しましょう。
4-1. NinjaOne
エンドポイント管理タスクを自動化・管理・修復するプラットフォームを提供するNinjaOneは、世界中で1万以上の組織に利用されています。サンパウロにオフィスを構え、ブラジル市場での存在感を高めています。
4-2. Teachable
オンラインコース作成プラットフォームを提供するTeachableは、2,300万人以上の学生がコースに登録し、講師は10億ドル以上を稼いでいます。ブラジルでも重要な拠点を設けています。
4-3. monday.com
プロジェクト管理ソフトウェアを開発するmonday.comは、サンパウロに戦略的拠点を設け、ブラジル市場での展開を加速させています。
5. 参入時の注意点
- 現地化とカルチャーフィット: ブラジルポルトガル語への適切な翻訳や、現地の文化・習慣への適応が重要です。
- モバイル最適化: スマートフォン利用率が高いため、モバイルファーストのアプローチが不可欠です。
- ソーシャルメディア活用: Facebook、Instagram、WhatsAppなどのソーシャルメディアを効果的に活用することが重要です。
- コンテンツマーケティング: 現地のニーズや関心に合わせた質の高いコンテンツ制作が求められます。
- SEOとSEM: ブラジルポルトガル語のキーワードや現地の検索行動を理解したSEO/SEM戦略が必要です。
- データプライバシーとコンプライアンス: ブラジルの一般データ保護法(LGPD)への準拠が求められます。
6. 急伸するブラジル市場でビジネスを成長へ
ブラジルのデジタル市場は急速に成長しており、eコマース、デジタル決済、フィンテック、クラウドサービスなど様々な分野で海外企業にとっての機会が存在します。しかし、成功するためには現地の文化や習慣、法規制への適応が不可欠です。適切な戦略と現地パートナーとの協力により、この巨大市場での成功を掴むことができるでしょう。
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